イギリスのインターネット広告事情とその運用―ロンドンのWeb制作会社はこう見る

拡大するイギリスのインターネット広告市場 

2015年度の最新データから読み解く

われわれがロンドンに拠点を構えているひとつの理由でもあるのですが、イギリスにおけるインターネット広告の市場は、アメリカや中国について三番目に大きいことはあまり知られていません。つまり、広告大国である日本よりも、インターネット上でのプロモーション予算が使われているわけです。具体的に現在出ている最新(2015年度)の数字を比較してみると、日本が1.15兆円に対してイギリスは86億ポンド(当時のレートで約1.6兆円)とけっこう差があるんですね。イギリスの人口は約6400万人と、日本のおよそ半分なので、このデータがいかに特徴的かがお分かりいただけるかと思います。一人あたりに換算すると、イギリスではかなりのインターネット広告を消費している計算になります。

 

イギリスでインターネットは多媒体の広告を大きく抜く

データはイギリスの広告協会IABによるものを参照。 http://adassoc.org.uk/news/uk-advertising-spend-passes-20bn-as-growth-hits-five-year-high/

データはイギリスの広告協会IABによるものを参照。 http://adassoc.org.uk/news/uk-advertising-spend-passes-20bn-as-growth-hits-five-year-high/

イギリスのインターネット広告の特徴とは

 

グラフは2015年にイギリスで各媒体で消費された広告費の内訳です(単位は百万ポンド)。これをみてわかる通り、全広告費200億ポンド(3.7兆円)のうち、約43%をインターネット広告費を占めています。テレビが25%ほどですから日本とは違い、イギリスではインターネットが圧倒的なナンバーワン広告媒体ですね。

 

実はイギリスでインターネット広告がテレビの広告費をはじめて抜いたのが2009年で、すでに8年も前のこととなります。以降、インターネット広告費は急激に拡大していき、現在もそのシェアを伸ばし続けています。

 

余談ですが、イギリスではレガシーメディアのデジタルへの対応は比較的早かったと思います。例えばテレビ。BBCやチャンネル4などのテレビ局は率先してネットでのオンデマンド放送に対応してきました。競合ともいえるNetflixの参入も早く、インパクトが大きかったこともあり、現在の媒体としての「テレビ」の接触ポイントは日本とはかなり違った印象をうけます。そして、新聞や雑誌もしかり。ガーディアンが矜持をもちながら「課金なしモデル」に挑戦する一方、2015年に日経新聞に買収されたFT(フィナンシャル・タイムズ)などはソーシャル対策をしっかりとしながら、有料の購読者も順調に増やしています。

 

このようにイギリスでは、早くから既存媒体も(広告モデルであるにせよないにせよ)デジタル上でのマネタイズを模索し続けてきたわけです。もし今後、日本も同様の道をたどるのであれば、その意味においてイギリスのインターネット、デジタル広告事情から学ぶことは少なくないといえるでしょう。

 

インターネット広告の行方―今後も「スマホがカギ」

さて、Advertising Association(英国広告協会)が2016年に発表した分析によれば、昨今のインターネット広告の拡大はモバイルでの消費によるところが大きいようです。事実、2014年度と2015年度の数字を比較するだけでもその傾向をはっきりと見て取ることができます。冒頭にも述べた通り、2015年度のインターネット広告費86億ポンドのうち、実に26億ポンド(約4.8千億円)がモバイル広告によるものでした。

 

このように、イギリスでもモバイルシフトの波はまだまだ続くことが予想されます。ウェブ制作の現場でもレスポンシブ対応は当たり前の時代。ネイティブ広告のクリエイティブやLPの作成、SNSを使ったユーザーとのコミュニケーション設計も、より具体的にスマホを意識しながらプランを作っていく必要があります。

YUICHI ISHINO