ヨーロッパのシリコンバレー――テックシティ・ロンドンの急成長と挑戦

ヨーロッパ随一のテクノロジー都市、ロンドン

「テクノロジー」をテーマに、あるいは「スタートアップ」をテーマに世界を見渡したとき、もっとも巨大でもっとも最先端を走るエリアがシリコンバレーであることは衆目の一致するところだと思います。一方で、シリコンバレー以外に目を向けたとき、どのような地名が挙がるでしょうか。

ニューヨークにテルアビブ、そのほかには……。実は、ロンドンがこれらに比肩するテックシティであることはあまり日本では知られていないのではないでしょうか。様々なところから色んなデータが出ているので、具体的な順位に誤差はありますが、ほとんどの資料でテクノロジーの先端都市としてロンドンが10位以内にランクインしていることは特筆すべき事実です。加えて、欧州内に限っていえば、およそスタートアップが事業を始める場所としては抜群の環境との評価を獲得しています(具体的には一次資料のEDCiをあたられたい)。

ロンドンはテックシティだ!

ロンドンはテックシティだ!

「ロンドンは、ヨーロッパ随一のテクノロジー都市であることをもっと知ってもらいたい」。そんな思いを込めて、以下、ロンドンの実情について簡単にまとめてみました。

 

ロンドンのテックシティ構想(Tech city UK)とは何か

シリコンバレーのライバルに

そもそも、イギリスでロンドンのテックシティ構想が発表されたのは2010年10月のことで、今から6年以上も前にさかのぼります。このとき、当時の首相であったデビッド・キャメロンによって、「米国シリコンバレーのライバルになる」ことが目指されました。背景としては、2012年のロンドン五輪が終わった後のレガシーをうまく活かしたいという思惑もあったようです。オリンピックのメイン会場となったスタジアムは東ロンドンにあり、ここのブランディングおよび再開発は行政的な課題でもあった。そこで、目を付けたのがテクノロジー企業(おもにスタートアップ)の誘致事業だったというわけです。(詳細は以下、英国政府のサイト内記事 PM announces East London 'tech city'

 

グーグルなどの大企業も参加

もともと東ロンドンには2010年以前から、オールドストリート界隈を中心にいくつかのテクノロジー系企業が集まっていたという経緯がありました。当時のイースト・ロンドンは(今でもですが)ヒップなエリアとして知られ、家賃が比較的安かった。その意味で起業資金の限られたスタートアップにはもってこいの場所だったというわけです(ただし、家賃については現在は高騰しています)。そうして、いつしかこの一帯はシリコン・ラウンドアバウトと呼ばれるようになります。

個人的にはこれがテックシティの「コア」となったと考えています。すなわち、エコシステムを形成する芽はテックシティ構想以前に出ていたというわけです。

そして、数年後。オリンピックを経て、スタートアップに限らず大手のテクノロジー企業もこのエリアの近くに拠点を構えはじめます。これが一気に拡大し、現在ある姿へと変貌を遂げるまでにそれほど時間はかかりませんでした。なかでも2012年に「Google Campus (London)」がこのエリアに設立されたことは大きな話題になりました。

ちなみに、テックシティUKのデータによると、現在テック関連の企業数は東ロンドンだけでおよそ5000社にものぼるとされています。

 

コワーキングスペースが増え続けるテックシティ 

スタートアップからフリーランスまでが集まる

このように、テックシティには多くのスタートアップがスケールを目指して拠点を構えているわけですが、それとともにコワーキングスペースの数もすさまじい勢いで増加してきていることは特筆すべきでしょう。

例えば前述のグーグル・キャンパスも東ロンドンを代表するコワーキングスペースを提供する施設のひとつですが、ここの登録メンバーは現在30000人を超えるといいます。このほか、ニューヨーク発のコワーキングスペースを提供する会社「WeWork」もロンドンに参入してきており、わずか2年あまりで15カ所を運営するにまで成長しています(余談ですが、WeWorkに登録する事業者は12000人をゆうに超えます)。

私自身、Google CampusやWeWorkの主催するイベントにときどき参加していますが、その熱気たるや筆舌に尽くしがたいものがあります。参加者のナショナリティも事業内容も様々で、まさにヨーロッパのシリコンバレーを体現している――。独自のエコシステムが着実に育っている印象を受けます。

WeWorkの様子

WeWorkの様子

 

テックシティ構想の先へ――Fintech(フィンテック)とこれからのロンドン

フィンテックの中心地になる

さて、このように東ロンドンから始まったロンドンのテックシティ構想ですが、個人的には現在あらたな局面に入った印象を受けます。その要因の一つが「フィンテック」です。いわずもがなフィンテックは現在もこの先も、大きな成長が見込まれる領域。とりわけロンドンが世界有数の金融都市だということもあり世界からひじょうに注目されています。そして、それは「地の利」の観点からだけではありません。現在、この国には「Project Innovate」という取り組みがあり、その名の通りイノベーションを促進するプログラムになります。このなかで「Sandbox」(サンドボックス、直訳すると砂場)という、いわゆる従来の規制を適用しない試み(特例のようなもの)があり、これによってFintechなど新しいテクノロジーが積極的に推進される土壌が整っているのです。

■参考資料 https://www.fca.org.uk/publication/research/regulatory-sandbox.pdf

こうした背景もあり、やはりロンドンにおいてフィンテックは確実に盛り上がっています。最近では、金融機関の新オフィスが多いカナリーワーフ(Canary warf)にもフィンテック系スタートアップが数多く集まっており、活況を呈している印象をうけます。ちなみに、こうしたトレンドを象徴するのがLever39(レベル39)と呼ばれるスペース。ここでは、将来有望な企業が日々、ブロックチェーンを使ったサービスやスマートシティの理想を求めてしのぎを削っている。このように、行政の支援を受け、東ロンドンに限らずテックエリアのコアがそこここにでき始めているのはロンドンにとってきわめてポジティブな動きではないでしょうか。

以上、やや駆け足でテックシティ・ロンドンの現在に至るまでの歴史とこれからの展望を簡単に紹介してみました。最後に少しフィンテックについて触れましたが、もちろん、ロンドンのテックシーンにはこれ以外に注目すべきことがたくさんあります。そうした事例を、折を見て今後も発信していければと考えています。 

■参考資料 https://www.gov.uk/government/speeches/chancellor-on-developing-fintech

(余談ですが、2014年に当時の財務大臣であったジョージ・オズボーンが行ったスピーチからも、国がいかにFintechに期待しているかがうかがい知れるので、英文ですが以上、一読の価値ありです)

※なお、懸念されるBrexitの影響については、状況に応じて加筆していければと考えています。

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