英国流「デザインシンキング」の基礎をばっちり学ぶイベントを開催したら大好評だった話

「デザインシンキング」のワークショップ

6月27日(大阪)と7月4日(東京)に、TAMLOの日本本社TAMのコワーキングスペースにて『英国クリエイティブエージェンシーに学ぶ!デザインシンキングの基礎』と題したイベントを実施しました。

TAMLOの石野(@ishinoyuichi)をファシリテーターに、イギリスでの協業パートナーThe Frameworksの日本人ストラテジスト須賀咲紀子氏(@sakikoyes)を招き、近年日本でも注目が集まるデザインシンキングの基礎を同社の事例をもとに解説。アクティビティを交えながらのワークショップとなりました。

大阪、東京ともに約30名(計60名以上)の方に参加いただき、会場は人いきれ。グループワークでは活発な意見が交わされるなど、熱気ムンムンの2時間半となりました。手前味噌ながらあまりに好評だったので、本ブログで少し内容を公開したいと思います。

2017年6月27日、TAM大阪のコワーキングスペースにて

2017年6月27日、TAM大阪のコワーキングスペースにて

2017年7月4日、TAM東京のコワーキングスペース。こちらも大盛況。

2017年7月4日、TAM東京のコワーキングスペース。こちらも大盛況。

 

「デザインシンキング」アクティビティの事例 その1

プレゼンターの自己紹介の後、まずはアイスブレイク。ここで実施したのが「目を閉じてお絵描き」のアクティビティです。参加者の皆さんに二人一組のペアになっていただき、2分間、お互いの顔をじっと見つめあってもらいます。そのあと、目を閉じて、相手の似顔絵を描きます。意外にも上手に描けた人、福笑いみたいになってしまった人、さまざまですが、描いた後に同じテーブルの人たちと完成品を見せ合うことで一気に和んだ雰囲気に。笑顔であふれていましたよ。

目を閉じて描いてもなんとなく「顔」とわかる、かな?

目を閉じて描いてもなんとなく「顔」とわかる、かな?

 

「デザインシンキング」とは何か

場が盛り上がったところで実際にデザインシンキングとは何か、その基礎を学んでいきます。

まず、デザインとは「カタチやイロを使って何かを作ること」という狭義の意味ではなく、「課題解決のためのプロセスを設計すること」と広義にとらえ直します。

ここで重要なのが「Think, Frame, Make, Work」というキーワード。The Frameworksのフィロソフィーとも言えるデザインシンキング的アプローチです。Thinkは観察/分析、Frameは構成/まとめ、Makeは試作、Workは実践。すなわち、「課題の観察や分析を経て、物事をいったんまとめる。その後、まとめたものをプロダクトとして試作。出来上がったものからカスタマーの反応を得る」というものです。そして、この一連の流れは反復されます。「カスタマーの反応が得られたらまたそれを分析し、試作。その反応をまたみて……」といった具合です。改善に終わりはありません。

考える、考える、考える

考える、考える、考える

 

「デザインシンキング」アクティビティの事例 その2

ここで再びアクティビティです。今度はいかに「課題」を見つけるかの練習。自分が日頃不満を持っている製品またはサービスをひとつ取り上げ、その製品(サービス)が「人」だと思って「サヨナラの手紙」を書いてもらいます。例えばこんな具合です。

 

「○○社のスマホさま あなたのことをネットで見つけたのは半年前。そのスタイルとスペックに一目惚れしました。何より感動したのはそのお値段でした。ひとつ前のスマホはとはもう3年も付き合っているーー。いい加減マンネリで、反応も悪く、そろそろ潮時かなと考えていた頃でした。ただ、お金をそれほどかけられないためにずっと乗り換えを躊躇していた私。あなたは天使のように舞い降りてきて、私に微笑みかけました。「これで快適なスマホライフが送れる!」私は即座に決意して、あなたを手に入れたのでした。しかしながらそんな私の夢は儚くも散っていきました。あなたといったら会社の帰り際にはいつもグッタリとなって、私に見せてくれるものと言ったら黒いスクリーンだけ!こんなにすぐにバッテリーが切れるだなんて騙された気分です。次のボーナスには必ずiPhoneに買い換えます。さようなら!」

 

ワークショップではこのような「サヨナラの手紙」を参加者の皆さんに書いてもらい、その後、グループで回し読みしてもらいました。「わかる、わかる!」と言った声や、「これじゃただのクレーマーじゃん」と言った意見など、こちらもさまざまな反応があり、大いに盛り上がりましたよ。

ちなみに多くの共感を得た手紙は、多くの人が不満に感じているという意味で、「企業にとって是非とも解決するべき課題」と考えていいでしょう。われわれもデザインシンキングを活用しながら「不満やストレスを解消する=ビジネスチャンス」と捉え、クライアントの皆様の課題解決をサポートしています。

 

「デザイン思考」と「ビジネス思考」は相容れない?

以上で見てきたように、「デザイン思考を取り入れよう!」と口で言うのは簡単。実際は、実践するのにいくつかのハードルが存在します。と言うのも、「デザイン」に求められるものと「ビジネス」に求められるものの中にはそもそも相容れない部分があるからです。

例えば、「ビジネスは結果が大事だがデザインはプロセスが大事」「ビジネスにおいてデザインは投資ではなく出費と捉えられがち」など。

これら相反する価値観をうまく融合させる考え方を「デザインマネジメント」と言います。この「デザインマネジメント」をうまく取り入れて成功している企業はたくさんあります。みなさんおなじみのAppleやIBM、UberやAirbnbなどが挙げられるでしょう。今回のワークショップでもそうした企業の具体的な事例を取り上げて、簡単に解説をしました。

どのメーカーがデザインシンキングをどうプロダクトに反映させているか、具体的にみていく

どのメーカーがデザインシンキングをどうプロダクトに反映させているか、具体的にみていく

 

「カスタマージャーニー」を描き、課題をあぶり出す

さて、デザインをビジネスにどう活かすかをひととおり学んだ後、最後は約45分間のグループワークです。極力コンパクトに、「Make(試作)」の部分を3~4人ひと組となって実践してもらいました。

今回、背景に使うストーリーは「世界各国のビジネスパーソンが出張で利用するロンドン中心部のホテル。その受付で最も多い問い合わせが、テレビのリモコン使い方。なかでも、テレビのおやすみタイマーの設定の仕方がわからない、という相談がかなりの割合を占めます。今、弾丸出張で宿泊する英語の苦手な日本人ビジネスマンAさんも同じことで困っていて……」というもの。

まずは「Think」から「Frame」にかけての進め方は、われわれがざっくりとお手本となるようライブで実践していきます。詳細は紙幅の都合で割愛しますが、メインとなるのはわれわれが「スイミングレーン」と呼ぶイラストを使ったカスタマージャーニー・マップです。今回はAさんがホテルに到着してからテレビのリモコンを使っておやすみタイマーの設定で格闘するまでの経緯を表現していきます。こんな感じです!

右端の「Emotions(感情)」のレーンでいろんな表情が読み取れますが、上述した通り、「ストレスを感じるところ」こそが改善すべきポイント。「疲れている」「英語が使えない」「コンシェルジュが要領を得ない」など、マイナスの場面はいくつかありますが、今回は「リモコンがうまく使えない」にフォーカスします(スイミングレーン、右端の感情)。というわけで、お題は「ホテルのカスタマーにとって最適なテレビのリモコンを開発せよ」に決定!

上から「Actions(行動)」「Emotions(感情)」「Touch points(タッチポイント)」「Stakeholders(ステークホルダー)」。それぞれ絵に描いて表現する

上から「Actions(行動)」「Emotions(感情)」「Touch points(タッチポイント)」「Stakeholders(ステークホルダー)」。それぞれ絵に描いて表現する

 

ソリューションシートを使って解決策を描く

さぁ、ここから実際の「Make」に取り掛かります。各自、手元に渡されたソリューションシートを使って自分の考えるベストなリモコンを考えていきます。これが「解決策1.0」。

それぞれ、ソリューションシートに解決策を書いていく

それぞれ、ソリューションシートに解決策を書いていく

次に、この「解決策1.0」をチーム内(3~4人)で回覧し、それぞれにチームメンバーのアイデアについてコメントを書き込んでいきます。コメントがひととおり書き終わったら、ソリューションシートを元のメンバーに戻します。

そして、他の参加者からのコメントを参考に、ブラッシュアップ案として「解決策2.0」を作り込んでいきます。

 

デザインシンキングを使ってポスターを作ろう

いよいよ最後のアクティビティです。「解決策2.0」を書き終えたら、改めてチーム全員で見直し、批評をしあいます。そして、そのなかで一番良かったアイデアをひとつ採用。その案について、今度はどのようにプロモーションするか宣伝用の「ポスター」をみんなで描いていってもらいます。ポスターデザインのほかに埋めるべき項目は、製品名・KPI・キャッチコピー・露出媒体などなど。みなさん、テーブルでアツイ議論を交わしていましたよ。

チームで知恵を絞ってコンセプトポスターを作っていく

チームで知恵を絞ってコンセプトポスターを作っていく

終わりに各チームの代表者が1分間のプレゼン。大阪と東京で計16チームの発表を聞きましたが、一切アイデアがかぶることなく独自の視点や切り口からさまざまな「新しいリモコン」が誕生しました。

どんなポスターが出来上がったか、最後は1~2分のプレゼンタイム!

どんなポスターが出来上がったか、最後は1~2分のプレゼンタイム!

また、余談ですが大阪会場ではTAMの「えがこう」プロジェクト主宰、日高由美子によるライブでのグラフィックレコーディングも同時開催。2時間半の内容をコンパクトに4枚の模造紙でまとめてもらいました。こちらです!どうぞ皆さんも参考にしてみてください。

今回のイベントのグラフィックレコード(その1)

今回のイベントのグラフィックレコード(その1)

グラフィックレコード(その2)

グラフィックレコード(その2)

デザインシンキングは楽しい

今回参加していただいた方々は、年齢も、働く業界もさまざま。初めて会う人たちが和気あいあいとグループワークを楽しんでいる様子に、「デザインシンキング」を使ったワークショップの可能性を改めて感じました。アンケートでうれしい言葉をたくさんいただいたので、そのうちのいくつかを紹介させてください。

 

「時間が経つのが本当に早かったです。2時間半があっという間に過ぎました」

「みんなで一つになって、短時間でものを作り上げる経験は貴重でした」

「初めて会う人たちばかりでしたが、いろんな意見を聞くことができて楽しかったです」

「デザインシンキングという言葉を知らなかったのですが、基礎から学べて勉強になりました。明日から職場で実践していきます」

 

あ、なんか通販の使用感コメントみたいになってしましたね。なので、このあたりでやめておきます。

最後に、こうした「英国流デザインシンキング」のセミナーを聞いてみたい、うちの職場の研修でできないか、などご希望がありましたらお気軽にお問い合わせください。定期的に日本に戻り、こうした活動を継続してやっていければと考えています。 コンタクトフォーム>>

なお、メイン事業として、TAMLOでは、デザインシンキングのメソッドを取り入れながら、デジタル分野でのクライアントの課題解決のサポートを行っています。お気軽にお声がけください!

 

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